馬場元子監修

リングで出会った男たち
バディ・ロジャース

 私がバディ・ロジャースの試合を初めて見たのは、グレート東郷さんに連れられてロサンゼルスからニューヨーク地区に転戦した時だ。ピッツバーグでのクラッシャー・リソワスキーとの対戦だったが、ディック・ザ・ブルーザーと極道コンビで暴れていた大悪党のクラッシャーがロジャースと対戦するとベビーフェースになってしまうのだから、すごいショックを受けた。

 後年デストロイヤーが真似したレスラー・ウォーク、あれは当時“ロジャーズ・ウォーク”と呼ばれて彼のトレードマークになっていた。彼がリングでこれをやるたびにファンはドッとわく。そのツラ憎さに声の限りの罵声を浴びせるのだ。それを平然と受け流すロジャースにはトップスターの自信とムードがあふれ、私はうなりっ放しだった。

 私がロジャースとシングルで初めて対決したのはシカゴの大会場アンフィ・シアターだった。私のNWA世界選手権への初挑戦。アガるというのはああいうことなのだろうか。野球選手時代にもプロレスラーになってからもアガったという記憶のあまりない私だが、この時はただボーッとして何をしたのかどんな試合展開だったのか、終わってからもさっぱりわからなかった。

 当時の私は東郷さんとフレッド・アトキンスの命令で口ひげを生やし、田吾作タイツに下駄をはいて大悪党をもって任じていたのだが、その私がピッツバーグで見たクラッシャーのようにベビーフェースにさせられたことだけははっきり覚えている。私がどんなに悪どいことをやっても、ロジャースはそれを上回る悪どさで私を痛めつけて来たのだ。彼は私などとはケタの違う大ヒールだった。

『個性豊かなリングガイたち』より